Slide II - 014

1 日中換気の補助を必要とするほど呼吸障害が進行し、また高度の嚥下障害も加わると、気管に手術で穴を開け(「気管切開」と言います)、そこに気管カニューレを挿入し、人工呼吸器につなげて人工呼吸を行う場合があります。この呼吸療法のことを、侵襲的人工呼吸療法(TPPV)と呼びます。
気管カニューレの装着により、確実に呼吸のための空気の通路が確保されます。なお気管切開やTPPV を導入すると、一般に発声が出来なくなりますが、気管切開やTPPV 導入前までしゃべれていた方は、構音機能(こうおんきのう、しゃべる機能)が保たれていれば、スピーキングバルブという器具の使用や気管カニューレのカフエア(カフ内の空気)の量を減らすことで発声が可能な場合があります。
ALS の場合、呼吸障害の進行に伴い、患者・家族・医療者の間で話し合いを重ねた末に時期をみて人工呼吸器を装着する場合、決断がつかずに呼吸筋麻痺が高度に進行し、救命の目的で緊急に人工呼吸器を装着する場合、および種々の理由から人工呼吸器使用を選択されない場合があります。TPPV を選択された場合、最終的には24 時間人工呼吸器を使って生活していくことになります。
呼吸器装着に関する意思決定に際して、その後の身体障害の進行のこと、人工呼吸器をつけることで生じる様々な問題など、不安や葛藤があると思います。家族や医療者と繰り返し話し合いをもつと同時に、在宅医療の経験者や患者会・障害者団体等から、有益な情報を集めることも重要です。そして、家族に対するエンパワメントとして、公的な介護サービスの利用方法や近隣の認定特定行為業務を行う介護派遣事業所を紹介することは、呼吸器の装着を前向きに検討するためにも、非常に重要な要素です。

侵襲的人工呼吸療法(TPPV)